菅原秀次 「ひとの『命、暮らし・人生、そして生き様』に寄り添える他職種連携の実現に向けて」
私は、本ワークショップではサブ・ファシリテーターとして、携わりました。参加前は、異なる大学の学生や他学科の学生同士のため、普段顔を合わせることのない中でのグループワークに私は若干の危惧を抱いてました。しかし全くの杞憂でした。非常に巧みに組立てられたプログラムと準備進行される先生方の極めて優れた教育指導により、学生同士の交流を深めつつとても円滑に進行しました。グループ討議では幅広い意見が出され、決して互いの意見を否定せず、活発に議論しつつも建設的な形で意見集約を進みました。その姿は、将来の「医療保健福祉における他職種連携」の理想的なありようを垣間見たように感じ、私の出番は殆ど不要にさえ思えました、
「痛みを即座に取り除く」というよりも痛みと上手に付き合い、なるべく痛みを感じない形で徐々に改善を図り、家族と共に、地域にあって「共に生きる」形で人生を過ごす患者・利用者に寄り添う「専門職チームのあり方」を、学生の内から学べるのは、将来の専門職を目指す学生にとって、極めて貴重な経験になるものと信じます。将来、大学を卒業し、資格取得して専門職に就いた際に、様々な葛藤に悩むこともありましょう。そうした際、学生時代に本ワークショップを通して「利用者・家族に対してチームで受容共感し、チームで共に悩み考え支援方法を導き出す~共に生きる」ことを目指すことの大切さと素晴らしさを体験し、そのために心開き相互の意見を受容しながら熱心に議論し合った経験と記憶は、きっと大きな心の支えとなることでしょう。
福祉分野では、人と環境の交互作用が社会生活であると想定し、人と環境の接点で何らかの齟齬が生じた際に、専門職の介入必要性を考えます。そのため、介入時には「人(心理・身体状況等)」と「環境(人間関係や社会・経済・制度関係等)」の両面に目を向け、「病気や不都合な部分」のみに焦点を当てず「生かせる能力」に着目します。本ワークショップでも「患者本人や患部だけに焦点を当てるのではなく、患者の『生物学的・精神心理的・社会的』3側面から総合的に患者を受容・理解し、総合的な対応・支援方法を見出す」ことを前提としています。「痛みの除去こそが患者の幸福になる」という狭隘な観点に陥らず、「患者・家族」に寄り添い、思いを否定せず受容し、家族含む取り巻く環境に幅広く目を向け、全体構造を俯瞰的に眺めつつ、個々の要因への細かい気づきを大切にします。この姿勢は、将来「チーム医療・他職種連携」の実現に大きな原動力になるものと考えます。医療保健福祉に限らず、「否定せずに受容し、小さな気づきを通して総合的かつ個別具体的に物事をとらえ、協力し合って課題解決に臨む」形の取り組みが、教育の場に広がっていくことを切に祈ってやみません。特に、ひとの命と人生と「生き様」に関わる、医療保健福祉の専門職ならば。
すがわら しゅうじ
社会福祉士
1981年➤横浜国立大学経営学部経営学科卒業
1988年➤慶応義塾大学大学院経営管理研究科(修士課程)卒業
1995年➤社会福祉法人特別養護老人ホーム事務長
1997年➤社会福祉法人特別養護老人ホーム施設長
2003年➤国立大学法人愛媛大学教育学部 非常勤講師
2007年➤鈴鹿医療科学大学保健衛生学部 非常勤講師
2009年➤福祉サービス第三者評価調査者指導者研修会(全国社会福祉協議会)修了
2010年➤鈴鹿医療科学大学保健衛生学部 准教授 現職