2.体験型学習

体験重視のワークショップ形式集中授業(1単位:2年次8月):  地域での慢性疼痛チーム医療をシミュレーションする

◆ 概要

 本実習は3日間の集中ワークショップです。東洋医学を用いた慢性疼痛治療の基礎を体験的に学習し(第1日)、さらにチーム医療の基礎となるコミュニケーションやディスカッションスキルをシミュレーション型の体験学習をとおして学びます(第2日・第3日)。

◆ プログラム内容

1日目     ~ 痛みに対する生活者としてのアプローチを学ぶ ~

目的

新聞、雑誌、マスコミなどで頻繁に取り上げられている、

痛みに対する一般社会で話題となることの多い以下の内容を、

医療系学生として理解する。

到達目標

医療系学生として、痛み対策として、一般社会人が行っている取組についての医学的理解を深め、体験することにより、痛みを持つ生活者とのコミュニカーションを深める能力を身につける。

内容

オリエンテーション、座学

漢方薬の効果、鍼灸とは、身体に対する東洋医学的な見方、薬膳講義

腰痛・筋肉痛の起こる仕組み、体操・姿勢・ストレッチの効果の理論

2日目     ~ チーム医療の基礎となる“チーム”について考える ~

 大手企業の集合研修など、ビジネスの現場でも導入される体感型アクティビティやグループ・ディスカッションを通じて、「チームとは何か?」を考える1日です。「グループ(単なる集まり)」ではなく、「チーム(目的をもち協働する集まり)」として機能するためには何が必要なのか、チームはどのような壁にぶつかりどのようにして乗り越えればよいか、について一緒に考えていきましょう。

 ところで、医療とビジネスは関係するの…? と疑問に思うかもしれません。実は「チームで働く」というテーマで、両者には大きな共通点があります。今、ビジネスの現場では「チームの重要性」が高まっています。どのようなモノが売れるのかという消費トレンドや、新しい技術が次々と生み出されるなどビジネス環境をとりまく変化は激しく、誰にも正解がわかりません。かつてのように「私が若い時にやったやり方はこうだ」「こうやれば上手くいく」という個人の成功体験が通じないのです。そのためビジネスの世界では、異なる会社や業種・職種、世代、国籍からなる「チーム」を組み、様々な角度からそのテーマを見つめ直して、新しいやり方を模索することがとても重視されるようになりました。

 チーム医療も「正解のないテーマにチームで挑む」という点が類似しています。2日目はいつもの講座とは少し違う内容を通じて、チーム医療の基礎となる「チーム」について考えたいと思います。


3日目   ~ 慢性痛をもちながら暮らす人への支援 - 多職種チームだからできること - ~

 ワークショップに参加する多くの皆さんは、1年次に慢性疼痛について講義で学んできました。それらの知識に加えて、ワークショップ1日目で学んだ痛みを和らげるアプローチや、2日目で育んだ「チームで挑む力」を駆使して、3日目には、慢性痛をもつ患者が、その人らしく生活していくためには、どのような支援が必要であるかを、実際の事例を通してチームで考え、ロールプレイを通して支援策を実践します。

 慢性疼痛は、原因が不明な場合も多く、有効な治療法がないことも多いため、生活の支障や仕事ができなくなるなど、患者に心理的、社会的そして実存的な苦しみをもたらします。そのため、一人の医療者だけでは解決出来ないことが多く、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床心理士、栄養士、鍼灸師など、多職種がチームとなり、患者さんと伴に共通の目標をもって、治療・ケアにあたることが必要になります。

 皆さんはまだ、各々の専門教育の途上にあります。そういう時期だからこそ、慢性の痛みに苦しむ患者さんに、医療者として何が出来るかについて仲間と考えることは、他の専門職の役割を知るとともに、自身の専門職に期待される役割についても気づく機会となります。様々な医療分野の学生が、ワークショップを通して互いの強みを知るとともに、互いに連携することが、患者さんを支える大きな力になることを実感してください。チーム医療を担う将来の自分を見据えて、ワークショップに楽しく参加し、自己の課題に気づく機会にしていきましょう。